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2012.05.16

借金を現物出資して(DES)、資本金に組み入れてもらえば、債務超過は解消する

 会社が赤字になると、すぐに債務超過になるわけではありません。

 資産よりも、負債の方が大きくても、債務超過でないこともあります。

 債務超過とは、

 

 負債 - 資産 > 純資産

 

 の状態のことを言います。

 

 会社が、債務超過になってしまうと、資本金、今までの黒字の累計である利益剰余金を使っても、負債を返済できないことになり、企業再生は難しくなります。

 言い換えると、債務超過とは、会社の保有する資産をすべて売却し、現金化したとしても、その金額が負債よりも小さいことを意味します。

 

 そのため、会社の損益計算書が赤字ではなくても、所有する不動産の含み損が大きい、子会社や投資有価証券の含み損が大きい、売掛金や貸付金が実質的に貸し倒れている場合にも、上記の算式が成り立つと、債務超過と言えます。

 

会社が債務超過になると、未公開会社は当たり前ですが、上場会社でも、銀行からの追加融資は難しく、企業再生までの道のりは、険しくなります。

すでに、資産をすべて売却しても、借金が返済できない会社に、追加で貸し付ける金融機関があるとは思えません。

そこで、会社としては、資本金を増やすことを画策することになります。

 

新しい株主として、現預金を増資してもらえれば、使える資金が増えるだけではなく、債務超過が解消できます。

ただ、これも、相当、難しい方法です。

というのも、この段階で、増資した株主は、

 

負債 - 資産 - 純資産 = 債務超過金額

 

 については、自分のお金を、債権者にあげたことも同然だからです。

 自分のお金が企業再生のために使われるのであれば、納得できますが、債権者の返済原資に使われてしまうのであれば、それが一部であったとしても、納得できるものではありません。

 

 そこで、現在ある負債を株に振り替える「DES」という方法を検討することになります。

 「DES」とは、正式名称を、デッド・エクイティ・スワップと呼びます。

 このまま、債務超過の会社が倒産すれば、債権者は、ほとんど、回収ができません。

 会社が企業再生できず、倒産した場合、債権者が回収できる債権に対する率は、だいたい、平均で7%と言われています。

 つまり、1億円の貸付があったとしても、700万円ということです。

 これは、黒字倒産、債務超過ではない倒産も含まれているため、債務超過であれば、さらに、回収率は下がるでしょう。

 

 そのため、破産したときに、債務免除させられてしまうぐらいならば、その債権を現物出資して、将来、企業再生できた段階で、その株を、会社自身、役員、社員、または第三者に売却することで、少しでも多く回収する道筋を残した方が得だと考えてもおかしくありません。

 しかも、株主になることで、議決権を持つことができ、今まで以上に、債務超過会社に対する監視も強化できます。

 

そして、下記の2つの効果によって、新たに、銀行からの融資や、新しい株主が募集できることも、多いのです。

       純資産が増えることで、債務超過が解消できる

       負債が減ることで、自己資本比率が一気に改善する

 

 債権をそのまま、資本金に現物出資することは、それを証明できる会社の会計帳簿だけがあればよく、登記手続きも簡単です。

 ただし、1つだけ、注意すべきことがあります。

 税務上、貸し付けている債権者側も、債務超過である債務者側も、時価評価で受け入れることです。

 

 そのため、1億円の貸付を「DES」して、債務超過している部分が6000万円あるとすれば、4000万円だけが資本金となります。

 そして、差額の6000万円は、債務免除益として、特別利益に計上されることになるのです。科目名や特別利益かどうかは、問題ではありません。

 問題は、税務上、債務免除益が、利益として法人税が課税されてしまうことです。そうなれば、企業再生のために必要なお金を税務署に支払うことになってしまいます。

 

 もちろん、債務超過であれば、会社には赤字が発生しているはずです。

 ところが、法人税では、繰越欠損金は、7年間しか繰り越すことができません。ずっと昔に発生した赤字がある場合には、それを使うことができないのです。

 そもそも、債務免除益に法人税が課税されると、企業再生が難しくなるだけではなく、借金を免除しただけなので、会社に新しくお金が入ってくるわけではありません。

 そのため、現実的に、法人税を支払うことが、難しいことも多いのです。

そこで、会社更生法や民事再生法の適用によって、債務超過の会社に債務免除益が発生する場合には、期限が切れた繰越欠損金も使えることにしました。

 また、私的整理であっても、「債務の免除等が多数の債権者の協議の上で決められる等その決定について恣意性がなく、かつ、その内容に合理性があると認められる資産の整理」であれば、同じように、期限切れの繰越欠損金が使えるようにしました。

 企業再生してもらった方が、支払ってもらえる法人税も多くなると考えているのでしょう。

 

 さらに、債務超過となっている場合に、よく見かけるのが、休眠会社です。

 会社が赤字になり、銀行への返済が難しくなった段階で、休眠してしまい、確定申告をやらずに放っておく場合があります。

 給料も支払えなくなり、社員が辞めてしまい、事業が継続できないという理由もあるでしょう。取引先にもお金を支払えなくなれば、商品を仕入れることもできませんし、事務所の賃料も支払えなくなり、追い出されてしまうことも少なくありません。

 その2年後ぐらいに、銀行などの債権者から、催促されて、法人税の申告を行うことがあります。

 このまま、法的整理に入ればよいのですが、もう一度、休眠会社から、企業再生を目指して、事業を開始する場合もあります。

 ただ、この段階で、青色申告が取り消されて、白色申告になっているので、そもそも、すべての繰越欠損金を使うことができません。

 このあと、青色申告に戻ることができれば、以前に、青色申告のときに発生していた繰越欠損金は使えます。

 そのため、すぐに法人税の申告を行うと同時に、決算期を変更して、青色申告に戻れるようにしましょう。

 

 以上のように、債務超過会社がDESするときには、債務免除益が発生するか、もし発生した場合には、法人税が課税されてしまうのか、を確認しましょう。

 債務超過会社が、債務免除益を計上せずに申告した後で、税務署の調査によって否認された場合、取り消すことができません。

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