債権者無視スキーム

企業再生をやり遂げるためには、債権者と敵対することも、覚悟すべき

会社の決算書を見せながら、銀行の担当者に、
「このままでは、借金の返済が滞るので、返済期間を延ばすか、金利を安くしてもらえませんか」
と、いきなり聞けば、
「私だけの判断では、回答できないので、上司や本店と協議します」
と、当然、言われます。

その後の銀行の対応は、会社の規模や状況、または業種によって、変わってきます。
ただ、基本的に、下記の3つの回答のどれかになるでしょう。

1.  返済期間を延ばすことはできます

いわゆる、「リスケ(リ・スケジュール)」と呼ばれるもので、例えば、残り3年間での返済であった借入金の契約を、5年から10年の返済に延長してくれます。
金利を下げるのは難しいのですが、返済期間は意外と変更が可能なのです。
銀行としては、より多くの金利が受け取れるからなのかもしれません。また、金融庁からの指導で、10年までのリスケであれば、不良債権にもなりません。

返済期間が長くなれば、単純に返済する元本は一気に減ります。
利息は経費になりますが、元本は経費になりません。
元本の返済が減った分だけ、税金の支払いも楽になります。

ただ、リスケを行ってしまうと、銀行の中で債権者区分が下ってしまうので、追加融資を受けることはできません。 毎月、試算表の報告をさせられたり、事業の状況を細かく聞かれるなど、手間が増えます。

基本的には、債務をカットされた訳ではないので、苦しむ期間が延びただけです。
さらに、リスケされたあとで、返済が滞れば、2度目の救済はありません。

2.保証会社に権利が移ります

借入金の中には、政府の保証協会や関連会社の保証がついているものがあります。
返済が3回ぐらい滞った段階で、銀行としては、全額、保証会社から補填されて、債権は、そこに譲渡(代位弁済)されます。
そのあとは、保証会社との話し合いになりますが、彼らの目的は、企業再生ではなく、できるだけ多くのお金を回収することを優先して考えます。
そこでは、話し合いにもよりますが、売却できる不動産は速やかに任意売却し、それでも回収できない債権は、まとめて、サービサーに売却されることになります。
もしかしたら、すべての不動産を競売し、会社は破産させるという選択をするかもしれません。
そのときの、保証会社の方針によります。
会社が、どのように交渉しても、相手は政府系機関や大会社であり、1社だけ特別扱いすることはありません。
企業再生の方法を提案したとしても、方針を変えることは難しいでしょう。

ここでは、債権の回収が目的になるため、事業で使う不動産であっても売却され、運転資金であっても回収の対象になります。
つまり、処理手続きが、淡々と進むことになるのです。

3.銀行としては、回答なし

何も言ってこないことほど、怖いものはありません。
何ヶ月もあとで、突然、銀行の担当者から電話がかかってきて、「コンサルティング会社を紹介しますので、そこの意見を聞いてください」と言われて、経営コンサルティング会社、会計事務所、または弁護士事務所などが、やって来ます。
そこで、コンサルティング契約をしてしまうと、会社の資料をすべてチェックされ、彼らが、会社の役員を通り越して、銀行と話し合い、今後の段取りを決めてしまうのです。
大株主を連れてくる、銀行がDESをする、追加融資を行なう、などにより、キャッシュフローを生み出す事業や価値がある不動産は、生き延びることになります。

ただ、今までの経営陣の元で、企業再生が行われることはありません。
新しい社長と取締役、さらには監査役までも連れて来られて、再出発となります。
事業がM&Aで、不動産が任意で、銀行またはコンサルティング会社が指定した第三者に売却されることもありますが、その代金は、そのまま借入金の返済に充てられます。

以上の3つの銀行の回答の中で、あなたが望む結果はありましたか?
ないはずです。
ではなぜ、こんなことに、なるのでしょうか?

最初から、銀行に判断を任せてしまうことが問題なのです。
銀行は元本を保証された債権者なのですから、一番、保守的な考え方をするのは、当然です。
会社が最初にやるべきことは、銀行に提案することなのです。

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銀行が自分たちの利益を失ってでも、会社を再生させるために、頑張ってくれるはずがありません。
それは、悪いことではなく、彼らの業務を遂行するという意味では、正しいとも言えるでしょう。
立場が違えば、見方も、行動も変わってくるのは、当たり前です。
ただ、銀行もすべての情報を持っているわけでありません。
会社も資金繰りが詰まるまでは、銀行には悪い情報をできるだけ出していないはずです。
だからこそ、銀行は、会社が出してきた情報を信用せずに、自分の債権を優先して、保全しようとするのです。
それに、本店の命令であれば、逆らうこともできません。
しかも、担当者は転勤してしまい、内部の報告書だけで、今までの経緯を読んだ人がやって来るのです。
企業再生の方法に、耳を傾けてくれる可能性は低いといえます。

他の債権者も同じです。
キャッシュフローがある事業に関連する取引先で、これからも長い付き合いをしていくつもりであれば、企業再生には協力的かもしれません。
でも、たまたまの債権者であったり、1-2回の取引先であれば、債権の回収を優先するはずです。
彼らは、銀行よりも、情報を持っていないのです。

では、このような債権者に対して、どのような提案をしていくべきなのでしょうか。
答えは、1つです。
生き延びさせたい事業を切り出して、規定路線を作ってしまうのです。
でも、債権者がそれを阻止するのでは? と疑問に思いましたか?

事業を切り出すだけならば、債権者に告知する必要はありません。
つまり、債権者の同意が必要ないのです。
しかも、会社分割を使えば、その事業に属する社員から、債権や資産まで、新しい会社に自動的に引き継がせることができるのです。

会社分割するときには、債権者への告知が絶対に必要ではないのか? と勘違いしている人がいます。
確かに、会社分割では、債権者への告知が必要な場合もあります。
しかし一方で、下記の3つの要件を満たせば、債権者への告知、これは官報への公告も含めて、一切の手続きが必要ありません。

  • 物的分割による会社分割であること
  • 会社分割後であっても、債権者が分割前と同様の債権の請求ができること
  • 分割によって、債務がまったく移転しないこと
会社分割

たったのこれだけです。
債権者に通知せずに会社分割を行うと、「詐害行為」になるのでは? と不安を訴える人もいます。

「詐害行為」とは、特定の債権者だけに返済して、それによって、他の債権者が返済を受けることができなくなった場合を指します。
上記の場合には、会社が自分の利益のために行っている会社分割であり、債権者の中で、特別に得をした人はいません。
全員が公平に損をしているため、「詐害行為」にはなりません。
さらに、もし上記の要件を満たさず、かつ債権者に告知せずに、会社分割を行えば、「会社分割の無効」の訴えはあるかもしれません。
それでも、「詐害行為」にはなりません。

そして、法律の効力が発生してしまった会社分割を、あとで無効にするのは難しいでしょう。
会社分割をしたあとに、事業を続けていれば、新しい利害関係者も増えていきます。
それに、会社分割を無効にして、債権者が得をするのか、という根本的な疑問もあります。

もちろん、事前に告知せずに会社分割を完了させてから、債権者に企業再生のスキームを提案すると、怒られることもあります。
会社分割を実行する前に、相談して欲しかったと、言うかもしれません。
その債権者が、弁護士と相談して、きつい文面で内容証明が送られてくるかもしれません。
でも、キャッシュフローが生まれる事業を存続させることで、社員にも給料を支払えて、結果的に、銀行や取引先への返済を多くすることが目的なのです。
企業再生へ突き進むことが、すべての利害関係者にとって利益になることを、説明しましょう。
実際に、会社分割したあとの事業がうまくいっていれば、実績も示してもよいでしょう。
それに信用性があると、債権者が認めてくれれば、そのあとの交渉もスムーズに行きます。
事業が、より多くのキャッシュフローを生み出すように、協力してくれる可能性も高くなります。

今の利害関係者と取引を続ける方が、絶対に、企業再生までの時間は早くなるのです

最後に、1つだけ重要なことがあります。
会社に関係する利害関係者、役員、株主、銀行、取引先、社員、大家、税務署など、全員が納得する再生スキームを作ることは、難しいものです。
それでも、最終的には納得してもらえるように、説得の努力を怠ってはいけません。

今の利害関係者と取引を続ける方が、絶対に、企業再生までの時間は早くなるのです

銀行と喧嘩することがあったとしても、本店の方針に従っているだけであり、支店の本音ではないのかもしれません。
それに、仲が悪くなった担当者でも転勤して、変わっていくのです。
再生後の会社の決算書の数字がよければ、新しく融資をしてくれるはずです。

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